2018.ベストアルバム

その年の話題作、多くの人の評判となるようなものと自身の好みが年々ずれていってるように思う。
それもまぁ購入の優先順位がアナログ中心でCDやストリーミングは後回しにするのもあるし雑誌やネットですら新しい情報を取りに行ってなくてレコ屋で気になるもの中心にしていってるのもある。
それと共に”どれだけ新しいものが出て来ても過去の焼き直し”であるとか”17歳くらいの頃に出会った音楽から先に進めない”なんていう言説なんてやっぱり本当にくだらないな思わせてくれた年でもあった。
そんな中、アフリカやアジアのもの含めて聴き逃してるのは多いと思いつつ2018年よく聴いたアルバム編。

こちらも順位は特にない。
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●M,Toumani et Sidiki Diabate,Fatoumata Diawara / Lamomali Airlines
フランス人ギタリスト、SSW、-M-ことMatthieu ChedidがマリのシンガーFatoumata Diawara、コラ奏者のToumani Diabate,Sidiki Diabateと組みセネガル、中国、レバノン、ブラジル、フランスなど多くのミュージシャンをゲストに迎えた3枚組ライヴアルバム。Mはソロアルバムを何枚か持ってて聴いてたしVannesa Paradisとの活動も聴いてきたけど、今まで一番気にいったし昨年本当に良く聴いた。ファトゥマタ・ジャワラが素晴らしいのは言うまでもないしコラの演奏含め、マリ音楽が前面に出てるA面の曲がいいのは勿論だけどM色の強いC面も良くて”La Bonne Etoile”で聴けるIbrahim Maalouf(レバノン)のトランペットの甘さもたまらない。F面、-M-とSeu Jorgeのデゥエット”Je Dis Aime”は、この曲だけでも何度針を落としたことか…そして大御所Yossou N’Dourも入っての大円団”Solidarité”まで素晴らしい構成。


●Sons Of Kemet / Your Queen Is A Reptile
ジャズでこの数年最も気になる活動をしているテナーサックス奏者、作曲家、バンドリーダーShbaka HutchingsのバンドSons Of Kemetの三作目は今までのNail Recordsから老舗のImapulse!から確か5月くらいに出たのかな。様々なバンドや客演をこなし、その音源を何枚も所有して愛聴してたなのにリーダーバンド、Shbaka and The Ancestors(2016)を聴くまでピンと来てなかったんだけど、それ以来まだ聴いていないの掘りまくってソンズ・オブ・ケメットも勿論遡って聴いてきた中での新譜。
テナーと2ドラム、テューバというカルテット。ドラムの内の一人がHonest Jonsを通じてUKオルタナからアフリカ、エチオピアのMulatu AstatkeからFloating Points。自身のHello Skinnerでの活動も好調なTom Skinner。もう一人はSeb Rochford、どこかで見た名前だな?と思ったらDavid ByrneとBrain Enoの『Everything That Happens Will Happen Today』で演奏していたスコットランド人。Theon Crossはこのバンドで初めて聴いけど多くの客演からソロアルバムも出している久々に気になるチューバ奏者。アンセスターズのメンバーが南アフリカのミュージシャンで構成されていて、さながら往年の名バンド南アメリカのBlue Notes~UK、カンタベリーへの系譜を受け継いでいるのに対して、こちらは白人ドラマー2人含めてはいても英連邦カリブ海はバルバドス出身としてのシャバカの色合いが出ていて興味深くも聴きごたえのある一枚。
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●Bokanté & Metropole Orkest.(Conducted by Jules Buckley) / What Heat
Snarky PuppyのMichael Leagueらが始めた、よりカリビアン、クリオール色の強い雑食性のある音楽を指向するユニットBolanteがUKの作曲家で編曲家であり指揮者でもあるJules BuckleyのMetropolr Orkestと組んだ一枚。カリブ海、マリー・ガランド島出身のシンガーMalika Tirolienのフランス語と英語が混ざり合う歌声の魅力が前面に出て、更に磨きがかかったマイケル・リーグの楽曲が堪能出来る。2018年にReal Worldからリリースというのも諸々感慨深い作品。


●Sting & Shaggy / 44/876
春先に配信で出た「Don’t Make Me Wait 」をたまたまラジオで聴いて耳に残りまくっててようやく出たアルバムは2018年の夏くらいにかけてDJでも家でも本当によく聴いた。
この二人がどんな経緯で組むようになった知らないままだけど録音メンバーも両者ゆかりのミュージシャンがほどよく混ざっていて今年に掛けても続いてるツアーも盛況な様子でこうした企画としては近年稀に見る大成功なんじゃないかと。色んな枝葉を気にせず普通に良かった。
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●The Lemon Twigs / Go To School
飲みの席か何かでスマートフォンにメモしていた「レモン go to school」の走り書きから少し間を置いて勧められて観た動画~レコード買って聴いた秋口によく針を乗せたレコード。2枚組のLPを買ったんだけど曲順がレコードで聴かれることを意識したかのような並びじゃなかろうか? なくらいで購入当初はB面ばかり繰り返し聴いてた。”コンセプト・アルバム”、”ロック・オペラ”なんていう埃を被ったような言葉が出てくる(実際そうした内容で制作されている)内容。その構成もとても上手く作られている。兎に角、曲がいい。僕が出会ったのがちょうど映画「ボヘミアン・ラプソディ」も公開されてQueenの再評価の熱が上がった時期だったこともあるが「クイーン聴くなら、良いと感じたなら、いま出てきている彼らみたいな音楽をもっと聴いて欲しいし、メディアはそんなのをもっと紹介して欲しい、じゃないといまCDやレコードにお金を使ってくれる層が退場した後に何も繋がらないじゃないか…..」それくらいこのレモン・ツイッグス(まだ20歳前後の兄弟)に未来を感じた。またちょうどこのアルバムのツアーで単独公演を観ることが出来たのも、この上なく幸運。彼らがキャリアを重ねていくとして数年後に今回の来日公演は語り継がれているんじゃないかと思うくらいに。


●Arctic Momkeys / Tranquility Base Hotel & Casino
名前はもちろん知ってたし、何かでちらりと聴いてはいたけど今まで一枚も所有してなかった。もう英語圏から出てくるロックゃポップスにグッとくることはないのかなと勝手に耳をオープンにしてこなかったことを恥じ入ったのはレモン・ツイッグスと同じ。以前から聴いていた友人から教えて貰ったのは、15年近いキャリアの中、異色のアルバムじゃないかな?ということ。僕自身。エレキギターを前面に出した疾走感のあるロックバンド~ガレージなイメージを勝手抱いていたんだけどピアノが特徴的なブルーアイド・ソウルとでもいった方がいい曲調。ていうかいかにジャンルに押し込めることが無意味か改めて。『Go To School』もそうだけどEDMからの流れやR&Bの要素といったチャート上での主流とは違う道を歩いていることに大きな意味があるように思える。


●Ali Shaheed Muhammad & Adrian Younge / The Midnight Hour
A Tribe Called Questのアリ・シャヒード・ムハマドとプロデューサー、DJ、ミュージシャンとしても多くの楽器を演奏するエイドリアン・ヤングによるユニット。
昨年はUSのR&Bやヒップホップをあまり聴かなかった中、数少ない繰り返し聴いた一枚。内容はサンプリング使わずアリとエイドリアンがほとんどの演奏を、一部、エイドリアンのプロジェクトVenice Dawnのメンバーが参加。エイドリアンが好むヴィンテージなソウルやジャズに映画音楽なアレンジの中、エイドリアンが手掛けたSouls Of Mischeifの『There Is Only NOw』(2014)の傑作リミックス10インチでの演奏を手掛けたアリとの融合が実に美味。ゲストもLadybug MeccaやBilal,Raphael Saadiq,Ceelo GreenにQuestloveやEryn Allen Kane,Laetita Sadierなどなど。James Poyserのフェンダーローズがたまらない”Together Again”といったジャズアレンジのイントス曲も実にいい。
アナログにこだわったと思われる録音方法も含めQuatic and The Western Transientの『A New Constellation』(2015)と並べて聴いたレコード。


●Antonio Loureiro / Livre
アンニオ・ロウレイロの新作。2017年に愛聴してたKurt Rosenwinkelの『Caipi』で客演してたので、ロウレイロの関わる新作としてはそれ以来。このアルバムにもカートが一曲参加。タイトルも”Caipira”だし延長線にある楽曲。CDは聴いてきたけどライヴに縁がなくて初めて「おおっ!」となったのが2015年の京都音楽博覧会。酔ってしまって寝そべって聴いてたら、聴こえてくる演奏が素晴らし過ぎて急いで見える位置まで移動して食い入るように聴いてから待望の新作は6年ぶり。音博のときも演っていたGilberto Gillの”Oriente”以外自作曲。盟友Andre Mehmariがシンセで参加の”Agora Para Sempre”もいい。9曲で42分というのもちょうどいい加減で、繰り返した聴いた。ブラジル音楽は魔境だし、聴いても聴いても追いつかないしここ数年サンパウロのアンダーグラウンドなシーンに目が行ってばかりだったのでミナス方面には疎かったけど、また振り向かせてくれたのがロウレイロ。次作からも楽しみ。


●Elza Soares / Deus E Mulher
ここ数年断トツに気になるミュージシャン、サンパウロのエクスペリメンタルなサンバシーンのキーマンでもあるKIko Dinucci(Guitar,Synth,etc)、Guilherme Kastrup(MPC,Drums)Rodorigo Campos(Guitar)、Marcero Cabral(Bass,Synth)らに、同じくサンパウロのアフロビートバンドBixia70がブラスで参加した2015年『 A Mulher Do Fim Do Mundo 』とそのリミックスアルバムに続いての新作も同様なメンバーと共に御年81歳にして絶頂期を迎えているエルザ・ソアレス。昨年亡くなったアレサ・フランクリンにも通ずる壮絶な人生を歩みながら日本での知名度はいまいちなれど歌手としてのキャリアは常に第一線。Romulo Froes作、漂うような”Lingua Solta”でのQuarteto De Cordas Os Caipiraによるストリングスの響き。いかにも”らしい”キコ・ジㇴッチのギターが耳に残る”O Que Se Cala”はBaxia70のホーンも良し。続いての”Exu Nas Escolas”では楽曲もギターもキコそのものでにやけてくる。80′sニューウェーブっぽい”Um Olho Aberto”も好み。今後要注目のSSW,Rafa Barretoがギターで参加の疾走するサンバ”Deus Ha De Ser”で閉める大傑作。


●Angélique Kidjo / Remain In Light
アンジェリク・キジョの新作はTalking Heads,1980年の『Reamain In Light』の丸ごとカヴァー。聴く前から期待するなという方が無理な状態でなかなか入手出来ずの中、12月にようやく手元に入ってからはターンテーブル乗せっぱなし状態で昨年を〆た。Blood Orange、Questlove,Alicia Keysが参加で爆発的な疾走感を聴かせる”The Great Curve”はもちろん、”Born Under Punches(The Heat Goes On)は当然ではあるけどオリジナルではくねくねした、いかにもなトーキング・ヘッズなサウンドをTony Allenのドラムが入ることでアフロビート、西アフリカサウンドへと繋いでみせた”Houses In Motion”やVampire WeekendのEzra Koenigのヴォーカルがじんわりくる”Listening Wind”に痺れた。インド系アメリカ人のJeff Bhaskerがプロデュース。ベナン出身のキジョがアフリカへの眼差しを向け接近した英米のニューウェーブの金字塔をカヴァーする。それもアフロ・フューチャリズム全開の映画「ブラック・パンサー」(映画のスコアにも参加しているMagatta Sowのパーカッションもこのアルバムに参加!!)が大ヒットした年にリリースされるというの何かの縁だけではないのでは。2018年は何かと分岐点な年だったのかもしれない。


●Janelle Monáe / Dirty Computer
前作『The Electric Lady』から5年、ようやくの新譜。合間に女優業もあり、そしてPrinceの死もあった。全てのポップミュージックを聴ききれていないので独断と偏見だけどジャネ―ル・モネイこそがプリンスの後継者として相応しい。45回転の2枚組のLP、冒頭タイトル曲はなんとBraian Wilsonがフィーチャー。このアルバム全曲にインスパイアされた物事が記載されていて、詳しくは国内盤のライナーなら読めるのかな? “Crazy,Classic,Life”は【The Vibranium In Wakanda,】から始まる(ここでも「ブラックパンサー」が!) Zoe Kravitzとの”Screwed”やPharrell Williamsとの”I Got The Juice”、プリンスマナーな”Make Me Feel”など聴き応えのある曲が多い中、白眉はMVも印象的だったGrimesをフィーチャーした”Pynk”。インスパイアの文章は長短それぞれだけど「ピンク」の出だしはこう始まる【Inspired By Prince’s Mischievos Smiles As He Played Organ On “Hot Thang”…】
次は何年後かわからないけど今から楽しみ。


●Neneh Cherry / Broken Politics
Blank Projectから2年。再びKieran Hebdenプロデュース、ノルウェーのSmalltown SupersoundレコードからはThe Thingと組んだ『The Cherry Thing』から続いて三作目。ここ数作の中でも曲の良さが際立つ。3Dとのコラボ曲”Kong”が先行シングルとして配信された。MAssive Attackのような低音感を感じさせない作りでそれは「前回のアルバムは怒りや力強さに溢れていて、一方今回のアルバムはより静かで練り込んで作った作品だと思うわ」というコメントにもあるように彼女なりの政治的なスタンスを静かに体現するよう汲取ったへブデンのプロデュースによるものなんだろう。録音がCherry Bear Studioでどうやらネナの養父でもあったDon Cherryと仲間が立ち上げたスタジオとのこと。”Natural Skin Deep”ではOrnette Colemanの幻の曲、”Grwoing Up”がサンプリングされていてへブデンのジャズマニアぶりが出てておもしろい。このアルバムをよく聴いたのは12月で、この文章を書いているのは1月。間にちょうどザ・スリッツのポートレイト作品を劇場で観たことを挟んでことで色々思う事もある。亡くなってしまったアリと生き残って作品を作り続けるネナ。ちゃんと歌詞を読み込むという課題も含め2018~2019と続く余韻ともなった一枚。


●Petite Noir / La Masison Noir The Black House
年末に入手した6曲入りミニアルバム。コンゴとアンゴラのハーフで南アフリカを拠点に活動するYannick Ilungaのソロユニット。同じく南アフリカに拠点を移したYasiin Bey(a.k.a. Mos Def)やSolangeとのコラボレーションを経て2015年にEP、『King Of Anxiety』リリース。続いてのフルアルバム『La Vie Est Belle / Life Is Beautiful』どちらにも入っている”Chess”がかっこ良くて、シンセサウンドと、どこかIan Curtisにも似たヤニックの歌声が自身が唱えるNoirwaveという呼称にとてもしっくりとくる。メタルバンドでギターを弾いていた10代からヒップホップとの出会いを経て、ルーツであるアフリカ音楽とニューウェーブを好んで聴く中で作り上げたNoirwave。Dany BrownとNukubi Kukubiをフィーチャーした”Beach”。Saul Williamsとの”Blowing Up The Congo”。Rha! Rha!との”F.F.Y.F(pow)に”Hanoii”。冒頭からぶちかます”Blamefire” どの曲もたまらない。アンジェリーク・キジョのカヴァーもそうだし、トーキング・ヘッズ『リメイン・イン・ライト』から38年。様々な邂逅を経て流れてくるサウンドに浸れることは一人の音楽ファンとして何ものにも代え難い。


●Blaze / Dancehall
年末のDJ用にバッグに入れっぱなしつい忘れてたので追記。
2017年の”Territory”のMVで注目されてフランスのGuillaume AlricとJonathan Alricによる従弟同士のユニットのデヴューアルバム。映像で確認する限り出てくるのが北アフリカ系のように思われる人たちなので彼らの出自もそうなのかもしれない。James BlakeやSampha,SBTRKT以降にあるベースミュージックとエモーショナルな歌、そしてピアノのコード感からビザ―ルハウスを通過させた四つ打ちはほんと好み。Anlmal63という見慣れないレーベルからリリースで調べてみたらDariusも出してた。Anlma63~Darius~Roche Musique~FKJ と並べてみて、「ああ~」となって小膝叩いた。昨年10月には初来日公演もあった(最近知った….多分東京だけ)みたい。音楽プロデューサーだけでなく映像作家であり、ステージでも映像は欠かせない様子。次の機会があれば是非観てみたい。

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