Back To Wild Frontier(R.I.P. Gary Moore)

それは本当に突然の知らせだった。Gary Mooreが死んだ!? 誤報、嘘であって欲しい・・・そんな思いは打ち砕かれ、全ては事実・・・休暇で訪れていたスペインのホテルで眠ったまま眼を醒まさず彼は逝った。享年58歳。

初めて聴いたのは僕が13~14歳頃。とにかくぶっといエレキギターと荒くれた感じだが繊細さも感じヴォーカル。ソウルもディスコもパンクもレゲエもニューウェーブもシンセサイザーミュージックもジャズも、そしてハードロック/ヘヴィ・メタルもヒット曲の中で混在していた80年代初頭に10代だった僕はラジオから耳に入る音楽全てが新鮮で砂漠に水を浸透させるかのように何でも聴いていて、そこにジャンルの括りもなく、もちろんハードロックも。豪快で粗野な中にも泣きのギターと演歌チックなメロディーラインを持つゲイリー・ムーアは格別に好きだった。1985年にThin Lizzyを解散させたPhil Lynottと共に出したシングル「Out In The Fields」の格好良さといったら、洟垂れ中学生を痺れさせるに充分で、しかもアイルランドの現実やフォークランド戦争を歌ったと思われる歌詞もマッチョやパーティーソングやオドロオドロシイ世界にSFな歌詞の多いHR/HMの中でもリアル感を伝えてくれるものを強く感じた。翌年に亡くなるフィルが単独ヴォーカル曲「Military Man」も素晴らしかった。

ベルファストというタフな街で生まれ育ったアイリッシュの中でも取り分けタフ。潰しても潰れない、当たっても砕けない。そんな無骨ないでたちと共に僕の中でアイルランドという国、ケルト文化に接近させるきっかけであり、それを加速させたのは1987年に出した『Wild Frontier』というアルバムだった。ファーストシングルの「Over The Hills And Far Away」のマーチングドラムのイントロを初めて聴いたときの胸の高鳴り。それまでにBig CountryやThe WaterBoysなどでケルト音楽の旋律を耳にはしていたが、ここで聴こえたものはまたそれらとは違うもの、上手く言葉には出来ないが。そしてアルバムタイトル曲「Wild Frontier」に「Strangers In The Darkness」、「Thunder Rising」そしてトラッドの「Johnny Boy」・・・どれもが亡き友フィルへの鎮魂歌であり、岩盤、石灰岩と泥炭の上に緑と湖を乗せたエメラルドとも呼ばれる故郷アイルランドへの想いが詰まったもの。

この年のワールドツアーで来日した大阪公演。初めて生で観たゲイリー・ムーア。1時間30分あまりと短いものだったが、『Wild Frontier』からを中心に内容の濃いステージ。アンコールの「All Messed Up」からラスト曲「The Loner」での泣きまくりのギター。「一匹狼」「はぐれ者」を意味するこの曲、カヴァーではあるが、正にゲイリー・ムーアを指すに相応しい言葉。

1989年にはケルトハードロック第2作目の『After The War』を出し、そのツアーでの来日も観れた。Ozzy Osbourneをゲストに迎えたりとゴージャス感を増したアルバムはケルトハードロックと呼ぶには前作のような統一感はないが、それでもライヴで聴いた「Blood Of Emerald」は格別だった。

その後はブルース追及時代に入り、アルマーニのバギースーツに身を固めた姿に、僕は次第に距離を取るようになったが、突然ドラムンベースを導入したアルバムも含めCDは聴き続けてたし、憎めない存在であり、HR/HMを聴くことも少なくなっていく中で、ゲイリー・ムーアはどこまでも僕にとってただ一人のギターヒーローだった。

2010年、21年ぶりの来日公演は仕事が抜けられず逃した。ブルース時代に区切りを付け、「今度はケルトロックで会おう」と期待を持たせた2011年2月7日の深夜の訃報。(スペイン現地は2月6日)

悲しくて受け入れ難く、たまらない気持ち・・・だけとの事実・・・これを書いている現在はこうして振り返ることも出来ているが、やはり寂しい。彼の魂はエメラルドの島、ワイルド・フロンティアー、アイルランドへ飛んで行ったことだろう。

I Miss You Gary…R.I.P. (1952~2011)

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