最近買ったレコードについては聴き込んでからまた書くとして、またVan Morrison聴きまくり期間に突入。全部ヴァイナルで買い直したいところだが、最もCDを買っていた時期に集めたから、それはまぁゆっくりするとして、ヴァイナルで持っている中から1986年の「No Guru,No Method,No Teacher」。
引退発言などあってごたごた、というか、あまり表に出てなかった時期のリリース。通算19枚目、僕が初めて聴いたレコードでもある。中川五郎さんのライナーノーツにもあるが引退宣言とは大げさなもので、レコード作って、プロモーションして、ツアーして、というロックビジネスとして、産業としてのシーンから遠ざかりたいという意味で、創作活動から離れるというものではない、そんな時期ではあるが、現在のようにインディペンデントでの活動が比較的容易でない80年代。ヴァンモリスンのようなキャリアのあるミュージシャンなら尚の事厳しいのは想像できる。
メディアや評論家などとの齟齬もありつつの、そんな中でのこのアルバム。実は90年代に入って、また再びの全盛期とも言える時期に入り、ツアーもバリバリこなす、そんな合間のレコード。
A面1曲目と2曲目、「ぼくは自分の友達の元に帰るんだ」と歌われる「Got To Go Back」から「On The Warm Feeling」の流れ。B面1曲目のゲール語でタイトルが付けられた「Tir Na Nog」(邦題「静かなるアイルランド)、「One Irish Rover」など、後にザ・チーフタンズと共作する「Irish Heartbeat」の萌芽も見られる。
で、やはりタイトル曲が白眉。かなり宗教的、というかメディテーションについての曲でもあり、そんな流れて、「導師は居ない、方法もなければ、(教)師も居ない、ただ君と僕と自然、そして父と息子、そして精霊だけ」。この歌は僕の声明文であり、特定の組織と関係もしてなければ、グールーも師も居ないことを、この歌で公言していると、ヴァン自身がインタヴューでも語っている。 そうとうロック、というか、ビジネスとして巨大化していくポピュラーミュージック界に対する嫌気が現れているように思う。
その後、1998年に「フィロソファーズ・ストーン~賢者の石」という未発表2枚組みCDでもわかるように、ヴァンは同じ曲でも色んなヴァージョンを録音していることが表に出た訳だが、更にライヴでもどんどんアレンジを変えて演奏することはよく知られていて、89年NYでのライヴ映像作品「The Concert」の中で、この「In The Garden」が、全く違うアレンジで演奏されていて、またこちらも素晴らしい出来で、来るべき90年代を予感させる素晴らしい演奏になっている。